高校生が高校生に授業する!? 「語れるすごろく」で広がる、自己理解の輪

CASE
実績

  • 参加者事例
  • 追手門学院高等学校、古川元晴さん

高校生が高校生に授業する!? 「語れるすごろく」で広がる、自己理解の輪

INTRODUCTION記事紹介

追手門学院高等学校・創造コースに在籍する古川元晴さん。彼は高校生ながら自作の教材「語れるすごろく」を開発し、クラウドファンディングで資金を集めつつ実際に販売までもを行っています。タクトピアのデザインする探究旅行プログラムでの気づきが自身のプロジェクトを始める大きなきっかけになったと語る古川さん。今回は、そんな古川さんが歩んできた挑戦のプロセスとその原動力について伺いました。

PROGRAMS
プログラム

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創造コース@追手門学院高等学校

本プログラムは、高知県での5日間にわたるフィールドワークを通じて地域の魅力を発見し、最終日に「自分が感じた高知の魅力」をプレゼンテーションとして発表する探究型プログラムです。 地域の方々との交流や現地ならではの体験を重ねる中で、当事者さえ気づいていないような「隠れた魅力」を主体的に観察・言語化していきます。こうしたプロセスを通じて、参加者は観察力や表現力、そして多様な価値観を受け止める姿勢を養います。

本日はよろしくお願いします!まずは簡単に自己紹介をお願いします。

大阪の追手門学院高等学校3年生(収録当時)の古川元晴です。周りからは「もっちー」って呼ばれてます。「わたがし」というプロジェクトの代表をしていて、自分たちで「語れるすごろく」というオリジナル教材を開発しました。それを使って、中高生に向けた自己理解学習についての訪問授業や講演を行っています。


高校生が高校生に授業をしているなんてすごいですね。どんなことを教えているんですか?

自分について知る機会を持ってもらうような授業です。たとえば進路に悩んでいる学生が、これからの選択をより滑らかにしていくきっかけになればと思っています。


「語れるすごろく」についてもう少し詳しく教えてくれますか?

このすごろくは「トークマス」「イベントマス」「ストップマス」という3種類のマスからできています。ひとつずつ簡単に説明しますね。


1つ目のトークマスは、参加者全員で対話をするマスです。トークマスに止まったら、トークカードの山札からカードを引きます。カードには「もしも超能力が使えたら?」などの会話のネタになるお題が書かれているので、そのお題についてプレイヤー同士で意見を交わします。


2つ目のイベントマスは、ミニゲームを行うマスです。プレイヤーはイベントカードの山札からカードを引き、そこに書かれているミニゲームを行います。たとえば「右隣の人と漫才をするならどっちがボケ?」と書かれているカードを引いた場合、全員で「いっせーの」で指をさして答えますが、その答えがみんな一致していないと先には進めず、そうでなければ1マス戻ることになります。


3つ目のストップマスは、マスに書いてあるお題について、止まった本人が一人で自分の考えを語るマスです。すごろくの中盤と終盤に配置しているこのストップマスは、それまでのすごろくでの対話をふり返り、ちょっと立ち止まって自分の思考を整理する時間、というイメージです。例えば「自分の好きなところは?」や「自分の座右の銘は?」などのマスがあります。


実は「語れるすごろく」はクラウドファンディングに成功して、すでに一般販売も行っているんですよね。実際にこのすごろくをやってみた学生さんたちの反応はどうですか?

はい。オンラインショップのBASEを通じて販売しています。


訪問授業の後に生徒に必ず記入してもらっているリフレクション(内省)を見ると、「自分について新しい一面を知れた」という声が一番多いですね。その他には、「友だちの知らなかった一面に気づけておもしろかった」や、「自分の中の知らなかった価値観を友だちが気づかせてくれた」などの声があり、いただいた感想からは他者と対話することによって生まれるメリットがたしかに読み取れるので、このすごろくをつくってよかったなと思います。


「語れるすごろく」のアイデアはどこから生まれたんですか?

きっかけは、高校2年生のときに参加した探究旅行です。この探究旅行をデザインしてくださっていたのがタクトピアさんでした。5日間高知県に行き、フィールドワークを通じて高知の魅力を再発見する。そしてプログラムの最終日に自分たちが感じた魅力をワークショップ形式で発表するという内容でした。そこで、僕たちのチームは、高知の人が「自分の中の高知愛を知れる」すごろくをつくったことがきっかけです。


このプログラムで僕たちが感じた高知の魅力は、高知の「人」だったんです。


1日目に観光スポットの土佐山にある「ゴトゴト石」で案内をしてくださった男性が「自分たちは観光に来る人たちのために活動しているわけじゃなくて、自分の家の庭を掃除しているような感覚なんです」とおっしゃっていました。


僕が住む大阪でも、観光客向けのサービスや仕事を多く目にします。しかし大阪と比較しても、高知の人たちはとにかく自分たちの中にある「高知」という土地や文化を大事にしているような感じを受けました。その心持ちこそが、観光する人にとっての魅力にもつながっているのではないかと思ったんです。


高知の人たちは矢印が外に向いていなくて、自分たちの中に向いている感じがあったというか……、自分の中に軸がある感じがすごくいいなと思いました。


そこで、高知のマニアックな情報をたくさん加えたすごろくをつくって、ワークショップで発表したんです。


高知でつくった「高知愛」を知ることができるすごろくと、自己理解を促す「語れるすごろく」では、内容がガラッと変わっていますよね。どうしてそのテーマになったんですか?

高知でのワークショップに参加してくださった地元の人たちが、「高知のことについて知れるすごろくだけど、それ以上に自分のことを知れたことにすごく驚きました」と感想をくれたんです。その言葉が「自己理解」というテーマに気づかせてくれました。それから、僕が元々教員になりたいという夢を持っていたことも理由のひとつです。


「教育」と、高知の人にもらった「自己理解」のアイデアをかけ合わせられないかな……、と考えていきました。何度もプロトタイプをつくって、ボードゲーム会社の人や教育関係の人など、いろんな人からたくさんフィードバックをいただいて、今の「語れるすごろく」ができた、という感じです。


古川さんはどうして教員を志望するようになったんですか? なにかきっかけがありますか?

実は元々、僕は美術が専門的に学べる中高一貫校に通っていたんです。


小学校の環境では絵が上手いほうだったのでそこに入学したのですが、やはり専門的な学校では周りがみんなすごく上手でした。自分が絵のうまさで上のほうに入れないのが悔しくて、だんだん「なんでやってんねやろう」と考えることが多くなってしまったんです。自分が描いた作品にも納得できず、周りと比べてしまう……、それでだんだん美術自体が嫌になってしまいました。


もし、このまま高校に上がったら、美大や芸大の選択肢しか残されていない。でも「自分はもっと違うことをやりたい」と思ったので、外部の高校を受験することにしました。中学の先生や友人に「外部受験する」と話してわかってもらうためには当時はかなり自分の気持ちに向き合った気がします。自己理解という面でも、それを言語化する点でも、僕にとっての最初の機会でした。


そこで追手門学院高校を選んだのはどうしてだったんですか? かなりユニークな学校ですよね。

そうですね。追手門学院高校の創造コースというところに進学したのですが、一番の理由は周りと同じ流れに乗るのが嫌な性格だったことがあるかもしれません。それに、どうせ違う学校に行くなら、新しいチャレンジもしてみたいし、おもしろいところに行きたいなと思い、創造コースを選びました。


創造コースはどんなコースなんですか?

このコースでは、ずっと4人班で授業を受けます。1対30で先生が板書してノートに写して、という授業は一切ありません。例えば数学の授業でも、共通テストの問題を使って「この問題の解説動画を15分でつくりなさい」のような授業内容なんです。先生に知識を教えられるだけではなくて、自分たちで知識を得て、それをアウトプットするという過程を3年間続けてきた、という印象があります。


コースの特徴的な授業に「探究」があります。この授業は自分自身について考えざるを得ない状況がたくさんあるように作られていました。入学して最初の探究の授業では、「自分の好きなものを108個、自分の嫌いなものを108個挙げよう」って課題が出たりしました。


そういう創造コースでの学びを通して、教育に興味を持ったのですか?

そうです。中学校までは、教員とは勉強を教えて、生徒を理想の進路に導く人。それが教員の使命だと思っていました。


でも、この高校に来て、「生徒の人間性そのものをつくる」仕事なんだなと思うようになったんです。やはり中高生は思春期で、かなり人間性が形成され、変化する時期だと思います。その時期に関わる先生という存在はすごく大事だなと実感して、だからこそ教員の仕事は楽しそう。おもしろそうだと感じるようになりました。


改めて、創造コースでの学びや「語れるすごろく」の活動を通して、気づいたことや学んだことはなんだったのでしょうか?

一番の学びは、「高校生のうちに行動すること」が大事だということです。


高校生は、基本的に帰る家もあるし、親もいるし、挑戦して大きく失敗しても全然大丈夫な環境だと思います。そんな恵まれた環境の中でアクションを起こすのは、高校生にしかできないこと。しかも、どんな小さなアクションでも、行動すれば絶対に大きな学びにつながります。だから、訪問授業や講演でも「高校生のうちからアクションを起こそうね」と伝えているんです。


では最後に、古川さんの今後の目標を教えてください!

チームわたがしのメンバーはみんな大学がバラバラになってしまいますが、大学在学中に一般社団法人を設立して、「語れるすごろく」を使った授業や講演を続けていきたいと思っています。それと同時に、「自分の軸を知る」というコンセプトを大事にしながら、新しいチャレンジをいっぱいしていきたいなと思います。


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